適応となる疾患
胆管がんや膵臓がんなどが進行すると、下部胆管が狭窄し、閉塞性黄疸の状態となります。そのまま放置していると、痛みの原因や胆管炎という炎症を引き起こします。本来は内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)により、内視鏡を用いて狭窄部位に、ステント(流れる道)を留置します。ただし、腫瘍によって消化管が狭窄している方や、消化管の手術をされている方は、通常の内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)が成功しない場合がありました。これまでの方法では経皮的なドレナージしかできなかったため、そういった患者さんは外瘻(体に管が繋がれた状態)を常に体につけておかなければならない状態になります。これにより、がん患者さんの余命のQOL(生活の質)が著しく低下している状況が現状でした。そこで開発されたのが、超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)です。これまでの内視鏡治療とは違い、胃や十二指腸から胆管を穿刺し、ステントを留置することで体外に管を繋ぐことなく閉塞した胆管の治療が出来る方法です。
方法
ステントを留置する場所によって
- 胃-胆管瘻(EUS-HGS)
- 十二指腸-胆管瘻(EUS-CDS)
- 胃-胆のう瘻(EUS-GBD)
の3つの方法があります。がんの場所などによって適切な治療を選択します。治療時間は症例にもよりますが、1時間程度となります。
手術日程
基本的には入院した上での治療となります。当日は朝から絶食で検査となり、処置時間は症例にもよりますが、約1時間前後程度となります。
合併症
気腹症(9%):
治療中に腹腔内へ空気が漏れ出た場合を指しますが、一般的には経過観察のみを行います。
胆汁性腹膜炎(3%):
抗生剤静脈投与等で保存的に加療します。重症の場合は手術やICU管理を行います。
ステントが抜ける(2%):
ステントの再挿入、経皮経肝的胆嚢ドレナージ術、緊急手術にて対応します。
腸管損傷(1%以下):
絶食、輸液にて経過観察します。穿孔例では、手術療法を要する可能性が高いです。
出血(1%以下):
輸血、内視鏡的止血術、腹部血管造影によるコイル塞栓術あるいは緊急手術を行います。
急性膵炎(8%):
保存的に加療します。重症の場合には厳重な全身管理にて管理が行われます。
これまでにない非常に有効な治療法であるとともに、合併症の可能性も高くなります。上記のような合併症が予想されており、全国的な報告として20-30%程度と報告されております。