検査の概要
口から十二指腸まで内視鏡を挿入し、胆管・膵管の出口である十二指腸乳頭から検査対象となる胆管・膵管の中にカテーテル(細い管)を挿入します。カテーテルから造影剤を注入し、膵管や胆管のX線写真をとることで、直接見られない管の中の腫瘍や結石、狭窄(狭くなること)などを評価します。同時に胆汁や膵液といった消化液の採取や、病変部から組織や細胞を取って検査することで、癌などの診断も可能となっております。
胆管・膵管の検査として他にCT・MRI・腹部超音波検査があります。これらは内視鏡を使ったERCP に比べ患者さんの負担は少ないですが、精度の面ではERCP に劣ります。また組織や細胞の検査はがんなどの確定診断に欠かせません。当院では年間約100件のERCPを施行しています。また造影検査に引き続き、内視鏡的治療を行うことが出来ます。
例えば、総胆管結石(胆管に石が落ち込む)の採石術やステント留置(胆管や膵管のがんによる狭窄・黄疸に対するステント挿入)、ドレナージなどの治療を行う場合は造影検査後、約30分程度の時間がかかります。またカテーテルの挿入が難しい場合などでは、検査時間が予定より長くなったり、検査がうまく出来ない場合もあります。
検査は鎮静剤を用いて眠ったような状態で受けて頂きます。検査当日は、食事はできませんが翌日、異常がなければお食事を再開します。検査当日から翌日までは、感染や急性膵炎の予防のため抗生物質・膵炎治療剤の入った点滴を行うこともあります。また当院では最新の透視機器を用いて検査を行っており、X線の被ばく量も最小限に抑えております。
見つかる病気
膵臓がん、膵のう胞性疾患など
胆管がん、総胆管結石
総胆管結石、胆のうがん、胆のう結石
ERCPによる検査
膵臓がんや胆管がんの造影・細胞診検査
膵臓がんや胆管がんは、膵管や胆管を造影しX線にてある程度、評価することができます。また膵液や胆汁といった消化液を採取し、狭くなっている部分から、ブラシで細胞をとる検査(膵液・胆汁細胞診/擦過細胞診)を追加することでがんの確定診断に近づくことが出来ます。
内視鏡的経鼻胆管/膵管ドレナージ(ENBD/ENPD)
膵管や胆管といった消化液が流れる管に管を留置し、鼻から外に出すことで膵液や胆汁といった消化液を連続で回収し、細胞診検査に出すことでより診断能力が向上します。
ERCPによる治療
膵臓がんや胆管がんなどによる閉塞性黄疸の検査・治療
内視鏡的ステント留置術
主に膵臓がんや胆管がんなどにより、胆管や膵管が狭窄し、胆汁や膵液の流れが悪くなっている時に、ステントという管を入れて、胆汁や膵液の流れを良くする治療方法がステント留置術です。流れが悪いままにしていると胆管や膵管に炎症を起こし、命に関わる場合もあります。ステントにはプラスチックでできたものと金属でできたメタリックのものがあります。メタリックステントはプラスチックのものに比べ、太く拡張するため再閉塞しにくいものでがんに対して主に使用いたします。
総胆管結石治療
- 内視鏡的乳頭切開術(EST)
- 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)
- 内視鏡的採石術・砕石術
総胆管結石とは、主に胆のうでできた石(結石)が総胆管に落ち込むことで、痛みや発熱、黄疸の症状を起こし、治療には結石を取り除く必要があります。そのためには、十二指腸乳頭(総胆管の十二指腸への出口)を広くする必要があり、乳頭部を内視鏡を通して挿入した電気メスで切開したり、バルーン(小さな風船)を入れて短時間膨らませて乳頭部を拡張する方法があります。総胆管結石があった場合は拡張した乳頭から、総胆管内にバスケット状のワイヤーやバルーンを入れて結石を十二指腸に引き出します(内視鏡的採石術)。結石が大きい場合は、特殊なバスケットカテーテルを胆管内に挿入して石を小さく砕くこともあります(内視鏡的砕石術)。
※適宜、必要な治療方法を選択いたします。
合併症
ERCP後の合併症として最も多いものが膵炎です。検査後の膵炎は全体の2-7%、に起こるとされています。ほとんどは軽症の膵炎で数日間の入院延長で改善しますが、稀に重症化(0.3-0.6%)した場合には強い疼痛や多臓器不全や胆管炎を起こす可能性もあります。他にも十二指腸や胆管の損傷による出血、穿孔(穴があくこと)、腹膜炎などの重篤な合併症を起こし命に関わることもありますが、万一、副作用や偶発症が起きた場合には最善の処置・治療を行います。入院期間の延長や緊急の処置・輸血・開腹手術などが必要になることがありますが、その際の診療も通常の保険診療にて行います。当院では重篤な合併症は起きておらず、安全に受けて頂ける検査となっています。